絶対絶命の窮地に立たされたとき、
自分の力ではどうしようも無くなった時、
ロケットの打ち上げを目前にしてカメラの設定が分からなくなった時、
打つ手は一つ。

『たすけて〜〜〜〜〜〜!!!!!!』

そんな心の中の叫びをどうにかおさえつつ、
平静なふりをして、隣で三脚をセットした熊野の旦那さんに声をかけてみます。
「すみません、どういう設定で撮ったらいいんでしょうかね?」

回答「プログラムで撮るのが確実ですよ。」

・・あかん。この逆光の中、全部、機械任せで撮ったらあかん。
それだけは、この1ヶ月でカメラの知識を詰め込んだ自分でも
分かります。こうなったら即興でカメラの設定を決めなければなりません。

シャッター速度はロケットの姿を捉えるためには下手に落とせません。
これは事前に調べた1/800をそのまま採用。
絞りは、自分の持っているレンズでは4.5〜5.6なので
たいした変動はないかもしれません。これはカメラに任せます。
あとは・・、

「+にしないと真っ黒になっちゃうよ。」
へ?
「太陽の位置(もう)変わらないから、試し撮りしてみ」



見ると熊野の旦那さんが、自分の左後ろのベテランっぽいおじいさんと
話をして、いろいろ聞いてました。
おじいさん、耳が遠かったらしく、それで自分が挨拶した時には反応が無かった模様。

なにはともあれ、天の助けです。
迷っていた露光の設定を思いっきり+にして、試し撮りを開始します。
パシャ!「白すぎ」パシャ!「暗すぎ・・。」とちょうどいい塩梅に調整して
今の条件でだいたい良さそうな露光の値を導き出します。

さらに、その値を中心に露光の設定を変化させて3連続で撮る設定
(AEブランケット)にします。要は、写真の明るさを変化させて、
ちょうどいい明るさになったら運がいい・・、ということです。
「下手な鉄砲、数うちゃ当たる」作戦!(種子島らしい?)

「Xマイナス60」
カウントダウンが発射60秒前を告げます。
もう、本当に時間がありません。
この設定で撮れることを祈りつつ、最後までゴミだらけのレンズ(追跡用)を掃除。
ゴミとれない!これはフィルターの裏か??

「28、27、26・・」
こっちは諦めます!修正すれば、なんとかなるでしょう!
神経を集中させて、レリーズ(シャッターを押す装置)をにぎりしめます。

カウントダウンの醍醐味、この緊張感。
秒数が減っていくたびに、切迫していく感じ。
待ち望んでいた、そして不安も感じていた瞬間が来る。
受験生でしたら、合格発表の紙を見る前のような気分でしょうか?
受かっているか?受かってないか?撮れるか、撮れないか。

「4、3・・、」
祈りをこめて、親指でスイッチを押します。


「打ち上げ写真」へ

「初の種子島ロケット打ち上げ見学」TOPへ
inserted by FC2 system